雪の磐越西線の旅
プロローグ
祝日に出勤した振替で1週間遅れの3連休にありつけた1月のある週末。翌日早起きして仕事に出かける必要のない
休日前の夜はいつも夜更かしをし過ぎてしまう。
しかしこのときはいつもとは違っていた。普段は「午前0時なんか夕方だぜ!」と張り切ってこの解放感に満ちた週に一度の
至福の夜を迎えるのだが、この日はいつになく冬の綺麗な星空に乙女心を揺さぶられ思わず涙して・・・ではなく
調子ブッこいて浴びるように酒を呑んですっかり泥酔してしまい、タモリ倶楽部が始まる頃にはHPはゼロ。
せ、せめて空耳アワーだけでも・・・グフッ!しかし、寝就いたのがいつもより早かったせいなのか、酒の量が多いと
却って翌朝早起きしてしまうせいなのか、目が覚めたのも始発電車が走り始めるだいぶ前の朝4時半だった。
そのまま二度寝するという選択肢もあったが、せっかくだからこのまま始発で地元を飛び出してどっか遠くへ行ってみるのも
良いかもしれないと思い、出かける支度をした。たまには事前の計画無しで思い付きでふっ飛んでみるのもいいものだ。
二度寝なら電車の中ででも多少はできる。
さて、そうと決めたらどっち方面にしようか?まだ乗ったことのない路線・区間といえば…
そうだ、磐越西線乗ろう
何年も前に、東武鉄道〜野岩鉄道〜会津鉄道経由で会津方面を乗り鉄した際、磐越西線の電化区間には乗ったことがあったが、
非電化区間の方はまだ乗っていない。
ちなみにそのときの旅行記はコチラ
その旅の帰りに 会津若松から485系臨時特急あいづ号で上野に戻る際、たまたま同時発車の新津行き列車(キハ40系の2両編成)が
並走していて、新津方面と郡山方面の二手に分かれる所で田園風景にトコトコと消えてゆく古びた気動車の姿は、まさに軽快そのもの。
EaglesのTake it Easyみたいなカントリーソングが似合う、どこか愛嬌と哀愁の漂うその姿に「いつか乗ってみたい」という思いを
心のどこかで秘めていたのだった。
ちなみに当時ワシの心を刺激した並走を繰り広げた2者がこちら↓
↑東京に帰るとき乗った上野行臨時特急(485系あかべぇ仕様・・・日が傾いていて影が・・・)
これで会津若松を後にして帰途に就くところ・・・
↑この2両編成(左の新色が先頭、右の在来色が後尾の混色編成)が途中まで
ピッタリくっ付いてきて、やがて新津に向けて寂しげに消えてゆくのであった。
実際に並走するシーンは録っていなかったのでお見せできないが、胸キュンものだったんだよ・・・。
昨夜の天気予報を見たところ新潟方面は雪。大雪とは報じられていなかったが、磐越西線は内陸部を走る故、奥地は
もしかしたら物凄い雪景色が見られたりして!?という期待もあった。
新潟地区のニューフェイスで新津へ
上越新幹線で新潟まで飛び、そこから信越本線の普通電車で磐越西線の起点である新津まで向かう。
新潟駅で出迎えてくれた信越線の車両は黄色とピンク色のツートンカラーが特徴の電車、70系・・・ではなくE129系であった。
ついこないだ運行開始し、少しずつ勢力を広げつつあることはネットの情報サイトで把握してはいたが、一発目で会えるとは・・・。
すれ違ってきた列車も含め当時見た限りでは従来の115系とほぼ同じ比率の遭遇率だったと思う。
新しい車両に対する期待と不安を胸にE129系は新潟を出発。首都圏でも御馴染み、チアリ先生によるありがたき御案内が車内に響き渡る。
感想としては東北本線系統で活躍しているE721系の直流版といったところか、内装も乗り心地も十分素晴らしいと思いました。
今後この電車の増備により近い将来115系は新潟地区からもいなくなり、MT54のダミ声モーター音やコイルばね台車のワイルドな乗り心地を
味わう機会は一層少なくなることだろう。まことに残念なことではあるが、しかし座席数こそ減ったものの向かい合わせのボックスシートは健在だ。
窓の桟に肘をかけ、雪に覆われた越後平野が車窓を流れる様を茫然と眺めながら、日常のことやこれからの旅程のことなどさまざまなことに
思いを巡らす・・・そういった要素は115系さらには旧型客車の時代ともなんら変わらない。ただ昔の車両より車内が綺麗になり、
乗り心地が軽やかになっただけだ。
左:E129系と初対面。
右:向うにもE129系が。当時115系と五分五分の遭遇率になっていた。
雪原を黙々と走り続ける。
走行中にもかかわらず妙な静寂が車内を包んでいるのは車両が新しいということだけが理由ではないのかもしれない。
新潟から20分で新津に到着。キハ40系が肩を寄せ合って憩う姿もいつまで見れることやら。
しんしんと降り続ける雪に期待は高まる。
新津〜会津若松2時間半のファンタジー
新津駅に到着。いよいよここから旅の本番である。新津から終点の会津若松まで車窓動画を撮っていたため、
写真が撮れたのは新津と会津若松での駅撮りだけになってしまった。
会津若松までの旅の詳細の様子は以下の動画でどうぞ。フルスクリーンがおすすめですが、YouTubeの仕様上
高画質が設定できるようになるまで少々時間がかかるかもしれません。ところどころで名所などの解説もテロップに入れてます。
本動画のあらすじというか、風景のうつり変りを簡単に説明すると、
前半は雪がチラチラと降り続ける新潟近郊の街、新津市・五泉市を駆け抜け、人里を離れ山奥へ入ってゆくにつれて
遠くが見渡せなくなるほど雪深くなる。
後半は雪のピークも過ぎ、会津若松に近づくにつれてやがて雪は止み、晴れ間が見えてくる。
・・・そう、初代スーパードンキーコングのふぶきの谷の展開とほぼ同じである。途中、行く手を阻むネッキーを踏んづけながらジャンプし、
爆発した樽の威力で遠くまでワープ!!・・・なわけあるかい。
本来ならせっかくの景色を優雅に堪能したいところだったが、カメラを持って良い光景に出遭えると、映像に映し出されている
風情ある風景とは裏腹に心の中はガチなハンターになってしまい 2時間半の間ずっとカメラを持ちっぱなしで腕が恐ろしく疲れた。
残念ながら相棒が入った樽が空中に浮かんでたりはしていないので、ハイタッチを合図に「ホッホッホッ、ハッハッハッ!」といって
途中交代するわけにもいかなかったのである。
*** 新津駅にて ***
新津駅に入線した会津若松行き列車。先頭はキハ40形。
後ろはキハ47形。今回は先頭寄りのキハ40形に乗車。
左:冬の厳しさを幾度となく経験してきたことを物語るかのような厳格な表情。多くを語りはしないがその風格はひしひしと伝わる。
右:一般形というよりむしろ急行形に近いキハ40形の車内。紺色モケットも健在なのだ。
*** 車窓動画 ***
2時間半の旅程、1回で全区間ブッ通しでご覧になった方には抽選で・・・賞味期限切れのうまい棒と飲みかけのウイスキーでも。
ウイスキーは17年ものですが買ってから4年経ったので21年物にグレードが上がっています。
※本気にしないで下さい
新津→会津若松ッ!
会津若松に到着後、軽く撮り鉄
会津若松に到着。長旅を終えてようやく安堵の表情を見せたかのようにも見える。
ここから先、郡山方面へは719系にバトンタッチ。
そろそろ車庫に引き上げる時間だ。 お疲れちゃん。
エピローグ
会津若松からは電化区間の車両719系で郡山へ向かう。
ここからは車内放送などでは「磐越西線」ではなく「磐西線(ばんさいせん)」と呼ばれることが多くなる。
非電化区間である新津〜山都は新潟支社、電化区間である喜多方〜郡山は仙台支社の管轄となっており、支社が変わることによって
文化も多少変わってくるのだろうか。
ちなみに雪深さでいえばこちらの方が非電化区間より凄まじく、駅のホームは雪が積もりに積もってオニ盛り状態。さらに列車走行中は
高速走行も相俟ってまるでモーターボートが波を蹴立てるが如く雪煙を高らかに立てて走っている様子が夜中でも車窓から見て取れた。
昼乗っていたらさぞかしもの凄い光景にお目にかかれたに違いない。
しかし、夜だったことと何より動画や写真を盛んに撮るほどの体力はもはや残されていなかったのでなんにも残していません。
会津の街を散策したり洋食屋のオバチャンと軽くクッチャべったりした後、719系電車で郡山へ。
この後信じられないほどの大雪の中を爆走するのであった・・・。